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第九回 コーショーのちょっと美味しい話★

「時間は有限」

〔温故知新〕という言葉があります。
昔のことをよく学び、そこから新しい考え方や知識を得ること。また、過去のことを研究して、現在の新しい状況に対処すること。

私も若かりし頃、(といっても30代~40代にかけてですが)タイトルを幾つも獲られている先輩プロから、打ち筋の技術論はもちろんのこと、精神論や麻雀哲学などの手ほどきを受けた経験があります。
私自身、トップリーグに籍を置いていたプライドはもちろんあり、時として理不尽に聞こえてしまうそれらの戒めを素直に取り入れられたかと言うと、そんなことはなく、イイ話だな程度に聞き流していたフシもありました。
愚か者!、ひとことで言ってしまえば、そんな若造、未熟極まりないプロでした。
富士山に登ったことはありませんが、その頂からは、麓にいたときには想像すらつかなかった眺望が広がっているはずです。
でもその日本最高峰の富士山とて3776ⅿの高さしかなく、世界最高峰のエベレストから見れば、コンパクトな名山のひとつに過ぎないわけで、エベレストからの眺望など望むべくもありません。

『上の世界から下はよく見えるけど、下の世界から上は見えないんだよ。この意味がわかるかな?土田くん』と、若かりし頃先輩プロから言われた言葉が忘れられません。
そしてその意味がようやく理解できたのは、恥しいことに五十路を超える少し手前でした。
自分がトップリーグまでトントン拍子で登りつめ、それなりの数字も残し、麻雀たるものを半分くらいわかったつもりになって、『なに古いこと言ってるんだ。時代は明らかに変わっているのに、経験則に縛られた発想にどれほどの価値があるのか?、時代遅れなんじゃないの?』と疑問符を付けた意識の低さに辟易しました。

麻雀プロは職人の世界、と書いてしまうと、また若い人たちに『古い古い』と笑われてしまいそうですが、麻雀愛好者の半分くらいの方は、職人芸を観たいと思って、チャンネルのスイッチを入れているような気がしてなりません。
勝つ方法を知りたい?、でもそんな方法があるなら、打ち手たちはいとも簡単に常勝を手に入れることができるはずです。
勝つためのヒントが欲しい?上昇志向の強い打ち手たちが存在することも確かかもしれません。
それでも、対局者4人のうちの勝者は1人、そして敗者として映ってしまう3人。こればかりは逃れようがありません。
だからこそ、観る者は敗者たちのドラマにも感動したいのではないでしょうか。
だからこそ、アガりに結びつかなくても、トップに結びつかなくても、勝者になれなくても、随所に散りばめられる打ち手の職人芸に魅せられたくて、チャンネルのスイッチに手をかけるのではないでしょうか。

そんなことを考えながら、次の世代を育ていく仕事をしたいと思いつつも、なかなか真意が伝わらない歯がゆさと自身の人間力の足りなさに悩みは尽きないこのごろです。

 


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