2024年11月1日(金)~卓上から宇宙をみる~121
〔奇跡の最終局〕
金子昇は最終戦を迎えて最下位にいた。
優勝の条件は厳しく、優勝争いをしている3人のうち、誰かを箱割り(ドボン)にしてトップを取らねばならなかった。
ラス前、親の堺正章からリーチがかかった。
ドラは と
ドラ
4巡目にイーシャンテンとらずで外していた を引き戻してのリーチ。
と
がドラゆえ、
という形からはなかなか
を外してリャンシャンテンには戻せないもの。
しかも堺は持ち点が5千点を切る大ピンチで迎えた親だった。
そんな状況下に置かれたら、孤立牌の か
のどちらかを切って、
はもちろんのこと、
が引けてもカン
で即リーチできる構えをとりたいもの。
ところが堺は懐の深さを見せてくれた。
を引き戻したのも、堺の選択に神が救いの手を差し出したように思えたのだった。
8巡目の親リーチを受けた西家金子の手牌はこれ
ドラ
なんだこれは!!
ドラ4枚使い、しかもピンフ・リャンペーコーまで見える超大物手。
ルール的には、13役あれば数え役満アリだったので、 さえ引ければ、満塁逆転サヨナラホームランの可能性があった。
その金子、リーチ一発で引かされた で長考に入った。
え?!私は目を疑った。
いくら6巡目に が切られている親の河とはいえ、堺の持ち点から考えて、直撃は当然のこと、ツモアガリでも箱割り終了となるので、押し切る一手、
をノータイムでツモ切る一手だろう。
ところが・・・金子は を選択。
もし、 が切れないと踏むなら、2巡目に堺が河に並べている
のほうなのでは?と見ていたが、金子は
を切った。
ドラ
現物の を切ると
ドラ
となり、 や
のポンテン倍満の可能性が残るのだが・・・
実際、堺が一発でツモった牌は だった。
これは・・・金子の選択ミスだろう。
しかも、 さえツモ切りしておけば、考える間もなく
のポンテンがとれたはずなのに・・・
次巡、金子のツモってきた牌は 。
恐るべき事態が発生していた。
私のような勝ち気にはやると、 ポン→堺
ツモ。
裏ドラが乗っていたら6000オールを引かれ、最下位のまま終戦を迎えていたことだろう。
金子は再び長考に入った。
ドラ
を切れば、ドラ表示牌
とドラ
とのシャンポンテンパイ。
「う~ん」と金子は何度も首を振った。
打 。
と
を切っている金子は、仮に
に何かがくっついても、アガリが近づくわけではない。
にもかかわらず、メンチンテンパイを崩す 切り。
いったい何者なんだ、この打ち手は?
そして次巡、金子は を引いた。
ドラ
を切れば文句無しのハネ満OR倍満テンパイ。
しかもドラ表示牌 を2枚持っているので、勝負牌
は ワンチャンス。
ところ が無情にもその は堺のロン牌。
親満は確定しているアガリとなるため、金子は箱が割れ、堺の優勝が決まるのだった。
金子大長考。
打
エッ??私は目を疑った。
ドラ
そんな・・・
このテンパイだとアガリが無くなるのに・・・
凄い胆力、物凄い眼力だった。
次々巡、堺のツモ牌は 。
イーペーコー・ドラ5のハネ満和了。
見事に条件がクリアされ、金子の大逆転優勝となるのであるが、私は二の句が告げられないほどの高揚感に全身が包まれた。
そして、麻雀には無限の幅と可能性があることを改めて思い知らされたのだった。
※本文は東京麻雀アカデミー(雀友俱楽部)テキストより
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