2025年10月1日(水)~卓上から宇宙をみる~143
〔弱気なトイツ作り〕
先日のことでした。
大学生のころから私を慕ってくれて、その大学を中退してまで麻雀普及の道を一緒に歩いていきたいと、並々ならぬ意欲を見せてくれた男が南2局の親を迎えました。
青年と表現するには四十をとうに超えてしまい、そもそもの話としても、ガラケーの時代からメールアドレスにwakadosiyori〈若年寄〉と入れているほど、若者らしくない男として周囲も呆れ顔で受け入れてきました。
麻雀も20代の初頭から、〈受けること〉と〈トイツ作り〉もしくは〈チャンタ作り〉に精を出すような打ち方をしていて、河はいつも序盤から中張牌だらけという、まさに若年寄に似つかわしいスタイルでした。
その男が南入した途端、それまでの低空飛行から一転、ドラ
がポンされているのも何のその、リーチのみの
待ちを敢然とかけ、終盤ラストの
をツモり上げ、1000・2000をモノにして(裏ドラが乗らないところがこの男らしく妙に納得してしまいます)、勇躍親番を迎えての配牌がこれ
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ドラ ![]()
なんと!配牌で七対子ドラ2のイーシャンテンになっているではありませんか。
〈流れ論者〉から見れば、前局、決死のリーチのみを打ち、ラストの
をツモり上げた成果と云うかもしれません。
この男の〈受け麻雀〉からは想像もできないファイティングスピリットを目の当たりにした私とて例外ではなく、血沸き肉躍る配牌をどう料理してくれるのか、その第1打に眼が釘付けになりました。
男は
を第1打に選び、わずかな震えを見せながら打牌しました。
「えっ?!」 「本当に?!」
この
を見た瞬間、私は七対子は成就しないなと思いました。
これは
がカブるという予測ではなく、この男の弱気な性格(ドラそばから処理したいという)が災いして、トイツシステムから逸脱してアガリを逃がすだろうという〈読み〉からくるものでした。
私のトイツ理論に関しては、耳にタコが出来るくらい何百回も聞かされてきたはずなのに、〈受け〉を強く意識する弱気な麻雀が妨害電波を出すのでしょう。
理解していても実践できないというジレンマに陥っているのです。
という4枚から1枚選ぶ手順において、仮にこの
が孤立牌であれば(たとえば
)、
から手放すのがシステム的には合っていて、次に
か
という手順になります。
ところが男が手にしていた
は孤立牌ではなく、![]()
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という〈亜リャンメン形〉だったのです。
〈亜リャンメン形〉は、![]()
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~
という形まで、![]()
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や![]()
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という形を含みながら、12通りあります。
そしてここからが本論なのですが、〈亜リャンメン形〉は、イーペーコー形になるひとつ前の形です。
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に
が来れば ![]()
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が来れば![]()
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という様に
イーペーコー形が(完成ではなく形として)誕生する原形で、トイツが増えやすい場においては、利用価値が孤立牌よりもあるのです。
ですから、配牌時に ![]()
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とあったイーペーコーの原形を序盤は大事にして、
か
を第1打に選んだほうが良かったのです。
男は3巡目に
も手放してしまい、その
を5巡目にカブるわけですが、これは結果論では片付けられないトイツシステムの肝と云える話なのです。
ああ、もったいなかったなぁ。
※本文は東京麻雀アカデミー(雀友俱楽部)テキストより
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