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2020年6月1日(月)~卓上から宇宙をみる~⑮

~卓上から宇宙をみる~⑮

昔、プロ連盟に田中幸夫というプロがいました

彼は私の小学校時代の同級生で、なぜかいつも私と同じ班にいた落ちこぼれでした
でも私とは不思議にウマが合い、放課後よく一緒に遊んだりしてました
ユキオが(田中姓は省略します)その頃からマージャンが出来ることは知っていましたが、落ちこぼれの身であることも手伝って、私のライバルになるなどとはツユほども思っていませんでした

高校を卒業し、私は待ちに待った<競技マージャン>の世界に飛び込み、週末がやってくると、スポーツ紙や専門誌主催の大会にせっせと通い始めていました
そんなある日のこと、私の知人がどんなわけかユキオをセットマージャンの席に連れてきたのです
小学校卒業後はプツリと連絡が途絶えてましたから、7年ぶりくらいの再会でした
卓を囲み数時間が経ったころ、私のトイメンがリーチをかけてきました

そしてその捨て牌は次のようなものでした

九萬:麻雀王国北:麻雀王国八筒:麻雀王国七索:麻雀王国西:麻雀王国五萬:麻雀王国三索横:麻雀王国  ドラ三筒:麻雀王国

すると下家のユキオは、リーチ一発で無スジのドラ表示牌二筒:麻雀王国を切り、次巡は裏スジの四萬:麻雀王国を切り飛ばし、挙句にドラスジの六筒:麻雀王国まで切って平然とした顔をしています
「強いネ」私がひと言いうと、ユキオは含み笑いしながら「土田よー、こんなリーチも読めないのか?このリーチは一索:麻雀王国高目イッツーのフリテンリーチ以外無いよ」と、小学校時代の彼とは似ても似つかぬ理路整然とした口調で返してきたのです

そして流局。開けられたリーチの手牌は

五萬:麻雀王国五萬:麻雀王国二筒:麻雀王国三筒:麻雀王国四筒:麻雀王国二索:麻雀王国三索:麻雀王国四索:麻雀王国五索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国九索:麻雀王国  ドラ三筒:麻雀王国

ユキオは私がプロ入りした数年後、パチプロ稼業から足を洗いプロ入りしました
そして灘麻太郎プロが前人未到の<王位>五連覇を賭けた戦いにおいて、あっさりとその偉業を打ち砕き<王位>を獲ったのです

ユキオは相手の手牌読みに関しては、恐らく現在に至るまで二千人以上誕生したプロの中でナンバーワンの眼力を持っていると私は確信しています
「ダブリーほど読み易いものはない」、ユキオの名ゼリフです
聞いた当初は、何言ってるのかなコイツは…くらいにしか思っていませんでしたが、それから30年たった今、ようやくユキオの言っていたことが、大ボラではないことがわかってきました

<読み>とは、手出しツモ切りを見ていてわかるものではないということをユキオは伝えたかったんだと思います

そのユキオは、<王位>を獲った数年後、突如としてこの世界から姿を消しました
あまりに未熟なプロ界に嫌気がさしたのかもしれません

※本文は東京麻雀アカデミー(雀友倶楽部)テキストより


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