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2021年9月1日(水)~卓上から宇宙をみる~㊺

~卓上から宇宙をみる~㊺

〔人の上に麻雀あり〕

若いころは気づかなかったのですが、四十の声を聴いたあたりから、おぼろげながら『麻雀』というゲームの輪郭が見えてきたような気がしています。
それまでの私は、牌譜を教科書にして、最善の一打とは何か?を朝から晩まで考えている麻雀オタクでした。
いや、正確に言えば、私の考えていたものは『麻雀』ではなく、34種136枚の絵合わせゲームでした。
今だから言えますが、恥しいことに、レベルの高い母集団から抽出するデータを集積すれば、必勝法が発見できると本気で考えていたのです。

たとえば次の手牌

三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国六萬:麻雀王国七萬:麻雀王国四筒:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒:麻雀王国六筒:麻雀王国五索:麻雀王国六索:麻雀王国七索:麻雀王国 ドラ 三萬:麻雀王国

ここに 四筒:麻雀王国 を引いてきたとき、

A 三萬:麻雀王国 切りリーチ

B 三萬:麻雀王国 切りヤミテン

C 四萬:麻雀王国 切りリーチ

D 四萬:麻雀王国 切りヤミテン

この4つの選択のうち、最もトップを取りやすい選択はどれなのか?
また、持ち点の高低によって、その選択が変わるものなのか?
当時はPCはもちろんのこと、データを分析する機器をもっていなかったため、すべて手作業で集計し計算したものでした。

元々数字と統計データが大好きな若造でしたから、寝る間も惜しんで必勝法作りに没頭したものでした。
三色手での和了牌譜、タンヤオピンフ手での和了牌譜、ドラ切りドラまたぎ筋での和了牌譜、3メン待ち和了牌譜(1~4~7、2~5~8、3~6~9に分類して)などを集めて分析していました。
またリーチ和了牌譜をリーチ宣言巡目別、持ち点別、親子別に仕分けし、そのデータを採ったりしていました。

そんな私を見て、プロ入りへの導きをしてくれた一流の裏プロが「大丈夫なの?その分析、役に立つの?」と怪訝そうに問いかけてきたことがありました。
未熟者の私は自信満々に「ええ、必ずや解明してみせますから、楽しみにしててください。」などと返していました。
するとその裏プロがこんな問いかけもしてきました。
「ツキの存在はどう考えてるのかな?データにツキの流れとか入れられないでしょ?」
私はこう答えました。
「ええ大丈夫です。ツキも数値化できますから。」
なんという浅はかな私。
穴があったら入りたい気分です。
当時の私は、持ち点イコール、ツキのバロメーターと考えていて、持ち点が高ければ高いほどツキがあり、低ければ低いほどツキが無いと考えていたのです。

ある日のこと
くだんの裏プロから親リーチがかかりました。
河は、こう。 (ドラ 九筒:麻雀王国)

二萬:麻雀王国五萬:麻雀王国八筒:麻雀王国四索:麻雀王国中:麻雀王国八萬:麻雀王国

同巡、私の手牌は次のような形になりました。

三萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国五萬:麻雀王国六萬:麻雀王国七萬:麻雀王国三筒:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒:麻雀王国六筒:麻雀王国六筒:麻雀王国三索:麻雀王国四索:麻雀王国五索:麻雀王国 ツモ 四萬:麻雀王国

裏プロの持ち点は、この南1局を迎えて▲1万5千点ほど。
私は逆に1万3千点くらいプラスしていました。
親からのリーチと言えども、持ち点差が3万点近くあり、それに比例したツキの差もあると考え、私はノータイムで 三萬:麻雀王国 切りました。

「ロン!」

「えっ⁉…」

裏プロは静かに倒牌しました。

一萬:麻雀王国二萬:麻雀王国六萬:麻雀王国六萬:麻雀王国九萬:麻雀王国九萬:麻雀王国九萬:麻雀王国四筒:麻雀王国五筒:麻雀王国六筒:麻雀王国四索:麻雀王国五索:麻雀王国六索:麻雀王国

裏ドラに 六萬:麻雀王国 が乗って、私は親満を討ち取られました。

第1打の 二萬:麻雀王国 、第2打の 五萬:麻雀王国 からわかるように、456の三色などには目もくれず、ペン 三萬:麻雀王国 待ちをハナっから決め打ちしてきた裏プロの真意は?
どうにも合点がいかない私は、その日の麻雀が終わった後、なぜペン 三萬:麻雀王国 の決め打ちなのか聞いてみました。
「浩翔、ツキを数値化しようとか、確率論や効率で麻雀というゲームを考えたら駄目なんだよ」
「麻雀はさ、何て言えばいいのかな、人知の及ばない神聖なゲームなんだよ」

四十を過ぎたあたりからでしょうか。
この裏プロの言葉の意味が少しだけわかるようになったのは。
麻雀を打っていると、牌たちがいろんなことを教えてくれます。
弱くて欲たかりで醜い人間たちが、牌たちが語りかけてくれる言葉で救われていく、そんなゲームが『麻雀』なんですよね。

※本文は東京麻雀アカデミー(雀友俱楽部)テキストより


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