2022年12月15日(木)~卓上から宇宙をみる~76
〔危険な感情移入〕
ジングル・ベルの季節がやって来ました。
私には・・・と思っていても、待ちを歩けばどこからともなく耳に聞こえてくるサンタの音色に、心がほんのりしてきます。
映画を観ていても、ドラマを観ていても、すぐに感情移入してしまい、あふれ出る涙を止められなくなってしまう私。
セリフが出てこないうちに、どこからともなくそのセリフが聴こえてきて、ひと呼吸、いやふた呼吸くらい早く涙腺が緩んでしまい、感傷的になってしまう私。
繰り広げられているシーンの向こう側には、カメラマンがいて製作スタッフたちが大勢いるとは理解していても、感情移入のほうが優先されてしまい、客観的になれない私がそこにはいます。
2枚目のオタ風 を渋々ポンする上家のオヤ。
7巡目という段階で、苦渋の決断をしたように見えたため、役牌の後付けドラ1くらいの手かなと思って見回すと・・・
生牌の役牌は、・・ の3種が河に顔を見せていませんでした。
まだ東場でしたから、いの一番にマークすべき牌はダブ であり、もしかすると、もうひと種類役牌を抱えてのダブル後付けの可能性もありました。
8巡目、 を鳴かせたオヤの上家が を打ってきました。
ドラが でしたから、かなり分厚く打点力のある手牌を抱えて<勝負>に入ってきているようでした。
その を横目でジロリと睨みながらツモ動作に入り、パーンと をツモ切りするオヤの雰囲気は、脅かしが効かないための苛立ちが露わになったかのようでした。
オヤの河はこんな感じでした。
同巡、西家がホッとしたような手つきで、それまで抱え込んでいた を切ると、驚くべきことにオヤから「ポン」の声が・・・
ポン ポン
えっ⁈ そういうことだったのか・・・
2枚目の を渋々ポンしたように見えたのは、高打点の煙幕だったのか・・・
つまり、超大物手が入っていたがために、あらゆる手を尽くしてテンパイ、更にはアガリまでの道筋をつけにいっていたということだったのです。
たとえば・・・
これくらいは序の口で、1枚切れの をも使って
いやはや恐るべき2鳴きプレー。
10巡目、勝負がかりだった北家が をツモ切ると、「ロン」低く響き渡るドスの効いた声が卓上の空気を切り裂きました!!
ポン ポン
は を2鳴きする直前に私がツモ切りしていた牌で、北家がこの を止められなかった非はどこにも見当たりませんでした。
初動をかけた の2鳴きをしたときのオヤの間合いと表情。
すぐに感情移入してしまう私のウイークポイントを知っての挙動だったのか?それは知る由もありません。
ただ、対局する相手はわたしではないし、相手にとっての私もまた然りであるとは、プロとして忘れてはならない<肝>であることを改めて思い知らされた1局となりました。
※本文は東京麻雀アカデミー(雀友俱楽部)テキストより
≫卓上から宇宙をみる一覧