2023年10月1日(日)~卓上から宇宙をみる~95
〔蠱惑な打ち方〕
<蠱惑(こわく)>とは人の心を引きつけ、惑わすさまをいいます。
加えて怪しい魅力でたぶらかすことらしいです。
「麻雀こそ蠱惑的」
皿の上で多くの虫たちが蠢いているさまは、卓上で打ち手が右往左往するさまに似ているともいえます。
麻雀の怪しい魅力に惹きつけられている多くの打ち手たちが、みんな皿の上の虫になって愉快に踊らされているこのゲームに勝るゲームを私は知りません。
敵となるはずの相手が、実はその正体が自分自身だったなんて、こんなサスペンスなゲームが他にあるでしょうか。
そしてこのゲームは恐ろしい牙をむく時があって、見てはならなかった友人のマイナスの人柄に気づいてしまったりすることがあります。
また、自分の皮膚の下に隠されていた性悪な性格が出てくることもあります。
それらが卓上に露わにされてしまうのだから、サスペンスモードは頂点に突入していくのであります。
私は<蠱惑的>な打ち手が好きです。
ドラ
8巡目、打ち手は をツモってきました。
場はまだ始まったばかりの東1局。
は生牌、 は自分が使っているだけ、 は1枚だけ顔を見せています。
北家のその打ち手は、いつものことのように、 を河に放していきました。
を横に曲げれば、タダどり同然の待ちで先制点を挙げられるはずなのに、 を切って不自然なシャンポンに。
10巡目、打ち手は をツモリ、 を河に置きました。
ドラ
はドラ表示牌を含め2枚、 も1枚河に見えています。
狙い通りのテンパイに変化したはずなのに、 を横に曲げずヤミに構えた打ち手の真意は?
次巡、打ち手は をツモ切りしました。
本来であればマンガン、いや裏ドラが乗ればハネ満をツモっていたはずなのに、打ち手は顔色ひとつ変えませんでした。
ドラ
この手牌は、8巡目の親が手にしていた爆発寸前形。
そして親は次巡 を引き を切って、タンピン・三色・ドラドラのヤミハネテンパイとなっていました。
つまり、この局のターニングポイントは8巡目の北家の 切りにあったのです。
90%以上の打ち手が選択する 切り3メン待ちリーチを打つと、その をチーして親満テンパイを取られていた可能性が大でした。
ドラ
こうなると、11巡目に北家がツモ切りした で親満ツモとなっていました。
また、親が豪胆な打ち手であれば には見向きもせずにツモに手を伸ばすはずで、次巡のツモ で
ドラ
追いかけリーチをするかは別として、北家が10巡目に引き入れたがロン牌となり、親ッパネ以上の放銃となっていたのでした。
このサスペンスは、12巡目に北家が静かに を手元に引き寄せて幕を閉じることになるのですが、まさに<蠱惑的>な和了劇。
私もそんな打ち手になりたいものです。
※本文は東京麻雀アカデミー(雀友俱楽部)テキストより
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