2021年5月15日(土)~卓上から宇宙をみる~㊳
~卓上から宇宙をみる~㊳
〔配牌完了式麻雀の功罪〕
(注:本文は2012年4月に掲載)
最近のマージャンは、とにかく速い。
フリー店のゲストに呼ばれると、ドラまで指定されて出てきます。
驚きの<速さ>と言えます。
ネットやモバイルでのマージャンもまた然り。
こちらは、丁寧にリー牌された状態で配牌を眺めることができます。
なんともはや、昭和に生まれた人間としては<速さ>に目を白黒させるばかりで、ついていくのもままならない世界になっています。
そして……(ここからが本題なのですが)恐ろしい洗脳が始まっているのです。
配牌完了式の世界のマージャンは、組み合わせを作る<速さ>も格段に優れていて、昭和のマージャンより、3巡は早くテンパイできる<仕組み>になっています。
バーチャルの世界のマージャンであれば多少の<ヤラセ>も納得したうえで打てるのですが、昨今のその<ヤラセ>がリアルにまで及んできているのです。
フリー店の利益確保を考えれば、自動卓を作るメーカー側としては当然のサポートなのですが、ゲーム時間短縮の技法として、ありとあらゆる手を尽くしています。
シュンツでもコーツでも似たような話になるのですが、配牌から5巡もたてば、誰かが好形イーシャンテンになっていることがやたら多く、とにかくリーチの声がかかるのが<速い>のです。
ドラ
こんな構えにしているのは序ノ口で、テレビ対局でさえ、ある人気若手プロは、次の構えから恐ろしいリーチを打っています。
ドラ
たしか4~5巡目でこの形になって、6巡目に引いたにヨシヨシという感じでを切ってリーチ。
リーチ直後にを引き、やがてでロンしてその場は終わったのですが、恐ろしい洗脳が始まっていることに私は打ちのめされたのでした。
これはその人気若手プロの技術の問題ではなく、日常生活のありとあらゆる局面に<速さ>が導入されてしまった弊害ではないでしょうか。
プロは、フリー店での仕事や、ネットやモバイル、更にはアーケードゲームなどなど、配牌完了式のマージャンで生計を立てています。
だから、日常的に組み合わせの<速さ>と向き合っているため、必然的に<速さ>を競うゲームとしてマージャンをとらえていかざるを得ない現実があります。
223・233・334・344・445・455
556・566・667・677・778・788
リャンメン形とトイツ形との複合形はご覧のように12種類あります。
そして、よほどの事情がないかぎり、平成の打ち手たちはこの12種類の形を大切にして戦っているのです。
なぜなら、<速さ>負けしたくないからなのです。
ただ、残念なことに、プロの本場所である公式対局に、配牌完了式の自動卓は導入されていません。
いずれ……昭和の打ち手たちがプロ界から去ったときには導入されるでしょうが、今しばらくは旧式のままでしょう。
だから<速さ>慣れしている若手プロたちが、その切り替えに気づいていない現実が寂しくてたまらないのです。
※東京麻雀アカデミー(雀友俱楽部)テキストより
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